まず一人目は和菓子職人の髙木さん。工房で和菓子作りを手掛ける一方で、企画広報としても催事や商品開発にたずさわっています。彼女の一押しメニューは、自身が開発を手がけた人気シリーズ『風月堂パフェ』からセレクトされました。
髙木さんの一番のお気に入りはどのメニューでしょうか。
髙木「私のおすすめメニューは、毎年2~3月に提供している『凮月堂パフェ~春を待つ~』です。新しい和菓子を作るときは季節感や旬の食材を大切に考えて開発していますが、こちらのパフェは風景や素材だけでなく、更に一歩踏み込んで、人の心の有り様まで写し取ることができたと感じていて、自分にとって思い出深いメニューです」。
髙木「春は卒業や入学、異動など、環境の変化とともに心の移ろいも多い季節です。これから始まる新生活を前にして、期待や不安が入り混じった複雑な心境を、味で表現したいと考えました。蕗の薹のほろ苦さやはっさくの酸味、パチパチキャンディ―の刺激的な食感などで、心象風景を上手く写し出すことができたのではないかと思います」。
注目していただきたいポイントはありますか?
髙木「パフェのデザインです。春の情景に見立ててストーリー性が出るように構成しました。下から順に ①気候が和らいで水が温かくなり(はっさくのコンポート・甘夏のジュレ) ②そこかしこから春の息吹が漂いはじめ(黒文字茶が香るジュレ) ③可愛らしい梅の花が咲き(フランボワーズ シャンティ・赤すぐりのジュレ) ④土からは木の芽が顔を出し(チョコクランブル) ⑤傍らには日差しを浴びた柔らかな残雪(ホワイトチョコ ムース)をそれぞれイメージしています」。
髙木「お店に立っていると、クランブルが土を模していることや、食べる前から聞こえてくるパチパチキャンディーの音でドキドキ感を読み取ってくださるお客様もいらっしゃいます。作り手の思いが伝わったときはとても嬉しいですね。これからも菓子作りを通じて季節に思いを馳せてもらえるような取り組みを続けていきたいです」。
季節を映し出す『風月堂パフェ』はどのようにして生まれたのでしょうか?
髙木「銀座凮月堂の茶房は2018年5月に和に特化したお店として新装開店しました。その際にメニューも見直し、当初は和菓子のみでスタートしましたが、リニューアル以前から通ってくださるお客様よりパフェを望む声を多数頂いた為、和菓子の食材をふんだんに取り入れた和パフェの開発に至りました。季節ごとに切り替わる凮月堂パフェは現在7種類。今後も月替わりを目指して新しいメニューの開発を進めるつもりです」。
新作パフェの開発はどのように行われているのでしょうか?
髙木「食材探しと味や食感の調整には毎回苦心しています。何か使えそうなものがないか徹底的に調べてから、テーマに相応しい食材を絞り、色々なパターンで組み合わせて試行錯誤する感じです。この時は蕗の薹のチュイールの食感の調整やムースの口当たりを滑らかにすることが難しかったですね。開発期間は2ヵ月程でしょうか。そのうち1ヵ月はずっと頭の中で構想を練っていました」。
髙木「どんなパフェにするかは年間行事から発想することが多いのですが、2~3月は節分やひな祭りのように一日で終わるものがほとんどなので、4月に向けて冬から春に移り替わる様をテーマにしようと思いました。『~春を待つ~』という副題もこの時点で決めていました」。
このパフェに合わせるおすすめのドリンクメニューを教えてください。
髙木「濃いめのお抹茶と共にお召し上がりください。香りを楽しみながらゆったりと安らいでいただけるひとときになると思います」。
今回は以上になりますが、これからも折に触れてスタッフのおすすめメニューを、開発にまつわるエピソードや商品に込めた思いと共にご紹介できればと考えております。気になるメニューがございましたら是非お試しください。
凮月堂パフェ~春を待つ~(ドリンク付き:煎茶・和紅茶・ハーブティーからセレクト)/2,530円(税抜2,300円)
提供期間:2021年2月1日(火)~3月31日(木)