華やかなデザインの上生菓子やパフェなどで注目を集めている銀座凮月堂のお菓子ですが、素朴な見た目の『薯蕷饅頭』もご用意しています。開発に携わった和菓子職人の永用さんにその成り立ちをお聞きしました。
薯蕷饅頭は、室町時代から作られてきたという古典的な和菓子。「薯蕷」とは山芋の一種、つくね芋を使った生地のことです。砂糖や小豆が高価だった時代には位の高い人しか食べられなかった貴重なお菓子であることから、目上の人に献上する「上用」の意味も含まれているといいます。昔から生菓子よりも格が高いお菓子として扱われてきたそうです。
生地の素材はつくね芋と上新粉と砂糖のみで、極めてシンプル。まずはつくね芋をすり金でおろします。すりおろした芋は強い粘りが特徴で、つまんで持ち上がるほど。それから他の材料と混ぜ合わせ、よくこねることで空気を含ませ、ふっくらと仕上げています。
永用「職人の手の塩梅だけで膨らみ方を調整しているので、作るお店によっても質感に差が出やすいお菓子です。余計なものが入っていないためあまり日持ちはしないのですが、その分素材の味をしっかりと感じることができます」。
中の餡は北海道産の小豆を使用し、工房にて手作業で仕込んだこし餡が使用されています。上品な甘さで口当たりの良い滑らかなこし餡に包まれているのは、刻んだ栗の粒が入った栗餡。しっとりとした生地と餡に加えて栗の食感や風味も楽しめる、銀座凮月堂らしい工夫が詰まった薯蕷饅頭になりました。
永用「銀座凮月堂はモンブランや栗饅頭などの栗を用いた甘味が人気のため、栗を使った商品を新しく作りたいと考えていたんです。割った時の断面が朧月のように見えることや、凮月堂の月にかけて『てるつき』と名付けました」。
おもたせとして4個入り、8個入り、15個入りの箱をご用意しています。箱入りは入学祝いのお返しなどに選ばれる方が多いのだとか。もちろん1個からのご購入も可能です。現在は茶房の土日祝限定メニュー『赤飯と季節を彩る御料理』の食後の甘味としても提供されています。
永用「派手さはないけれど、とても美味しいお菓子なので、気軽に食べてこの味を知っていただきたいですね。人の門出に寄り添えるお菓子でもあると思うので、今後はお祝いのお返しとして赤飯とのセットも考えています。『うちではずっと凮月堂のこれだよね』と言っていただけるような定番商品になればうれしいです」。
贈答にぴったりの薯蕷饅頭。お世話になった方へのお礼やお祝いの気持ちを上質なお菓子に託し、届けてみてはいかがでしょうか。
てるつき(薯蕷饅頭)/1個300円、4個入り1,200円
※土・日・祝 限定の茶房メニュー『赤飯と季節を彩る御料理』1,980円(税抜1,800円)にて、食後の甘味としてお付けしています。