銀座凮月堂は、銀座凮月堂ビルの2階に茶房と割烹の店舗を構えています。こちらの建物に入る際、必ず通る1階のエントランスにて、この春からおもたせの無人販売所をスタートさせました。大都会銀座の街中で無人販売所を行なうという意外性のある取り組みを考えた茶房の店長・渡邉さんにお話を伺います。
渡邉「銀座凮月堂にはたくさんの魅力的な商品がありますが、より多くのお客さまに知っていただくためにも、販売方法を変えることで新しい動きが生まれるのではないかと思い、銀座という街と無人販売が作り出すギャップの面白さに注目しました」
現在無人販売所で購入できる商品はカステラ1種類で、お釣りが出ないよう1,000円ぽっきり。カステラの包みが整然と並べられた様子は、思わず立ち止まって覗き込みたくなる風景です。料金箱の隣には持ち帰り用の袋もしっかり備え付けられています。
渡邉「茶房や割烹はビルの2階で、初めていらっしゃるお客さまにとっては入りにくいと感じられることもあったようです。けれど、この無人販売でしたらビルに入ってすぐのところで買えますし、価格も店頭より少しお得になっていますから、通りがかりに覗いて気になったという方にも手に取っていただけるようになりましたね」。
感染症流行の影響で極力非対面・非接触が望まれる中、無人販売所は人と接触せずに買い物ができるのも利点の一つになっています。
渡邉「このご時世でなくても、対面でのお買い物が苦手な方は少なからずいらっしゃいますし、ビルに出入りされている業者さんたちにとっても、制服のままでは銀座のお店に入りにくいという思いもあったようです。仕事の合間やお急ぎの時でも気軽に買えるお土産としてご利用いただく機会が増えました」。
カステラは、長年愛されてきた銀座凮月堂の定番メニュー。おもたせやお祝いのプレゼントとして購入される方が多いため、縁起が良い響きの『樂(らく)』と名付けられました。店頭では1,200円での販売ですが、無人販売所の場合はきりの良い1,000円で購入することができます。
長く販売を続ける中で素材の見直しや砂糖の配合を変えるなどして改良を重ねてきましたが、華やかな上生菓子と比べるといささか注目されにくいメニューでもありました。この無人販売所で初めて存在を知ったという方もいらっしゃるかもしれません。
渡邉「『千寿菊卵』と言って、マリーゴールドの花を飼料に育った鶏の卵を使用しています。卵と小麦粉、ハチミツなどのシンプルな素材でつくるからこそ、色や味わいにも卵が色濃く反映されるんです」。
包みを解いて現れた黄金色のカステラは見た目にも華やかです。しっとりと弾力を感じる生地は食べ応え抜群。濃厚な卵の風味と、愛媛みかんからとれる希少なハチミツのやさしい甘さが口の中に広がります。日持ちもするので、銀座土産としてもご家庭用のお茶菓子としても手頃な一品です。
今後はカステラ以外の商品の販売や、夏季には涼をさそうディスプレイなども計画されているのだそう。ただの買い物の場というだけでなく、お客さまと銀座凮月堂との新たなコミュニケーションの場としても活躍しそうです。
カステラ『樂』/1,000円(税抜926円)
※店頭価格1,200円のところ、無人販売所ではお求めやすい特別価格にて販売中です。