お客さまに常に新鮮な味わいを届けたいと、新しい和菓子を創作し続けている銀座凮月堂。2021年3月にメニュー化された新作『ハーブ金団』を考案したのは、工房部の和菓子職人石渡さんです。
金団(きんとん)とは、練切餡や羊羹を裏漉し篩(ふるい)でそぼろ状にし、餡の周りに付けた上生菓子のこと。裏漉し篩の編み目の細かさによってそぼろの太さが変化し、出来上がりの表情も異なります。
写真右が新作の『ハーブ金団』。左は山芋を使った薯蕷(じょうよ)練切のそぼろで粒餡を包み込んだ伝統的な金団の『三千歳(みちとせ)』です。
『ハーブ金団』のそぼろは、生のローズマリーを煮出して香りづけをし、レモンピール、国産の蜂蜜を練り込んだ銀座凮月堂のオリジナル羊羹から作られています。爽やかなローズマリーの香りが不思議と羊羹にマッチしています。
石渡「ローズマリーの羊羹は昨年より発売している『羊羹テリーヌ』の開発の際に思いついたもので、何か別の商品に応用したいと考えていました。ハーブを使った金団は他になく、銀座凮月堂らしいオリジナリティが出せたと思います」。
内側の餡にも石渡さんの工夫が光ります。酸味のある木苺餡で求肥を包み、さらに美しい緑の抹茶餡で包み込みます。裏漉ししたローズマリー餡のそぼろを丁寧に植え付け、ローズマリーの葉を添えたら完成です。
石渡「ぱっと見はとても素朴ですが、ローズマリーがもたらす予想外の風味や断面の可愛らしさにも趣向を凝らしています」。
ともすれば単調になりがちな上生菓子を、若い世代にも楽しんでもらいたいと考えている石渡さんの工夫が詰まっています。何層にも重なる風味と食感の変化が楽しめる一品で、お茶はもちろん、シャンパンとのペアリングもおすすめです。
通年メニューとして提供予定ですが、ハーブの種類を変えた新作も考案していくそうです。
銀座凮月堂では、新作の『ハーブ金団』のほか、三月末まで春らしい桃色の金団『三千歳(みちとせ)』も販売していました。
こちらは大和芋を蒸して白餡と合わせた『薯蕷(じょうよ)練切』を使っています。中の練切は粒餡にすることで、小豆の皮の風味がしっかりと味わえるのが特徴です。
『三千歳』を作ってくれたのは、和菓子職人の永用さん。
永用「昔から中国には、三千年に一度咲き実を結ぶ『三千歳』という桃が不老長寿をもたらしてくれるという伝説があります。そんな桃の花をモチーフにした縁起の良いお菓子です」。
こういった歴史やお菓子の成り立ちを職人から直接聞けるのも銀座凮月堂の魅力の一つです。
『三千歳』の販売は三月まででしたが、以降も季節の金団との食べ比べセットを提供しています。昔ながらの金団と現代の金団、古今の良さがどちらも味わえる銀座凮月堂。二つ揃えて食べ比べをしてみるのも面白いかもしれません。
ハーブ金団(ドリンク付き:煎茶・珈琲・和紅茶からセレクト)/1,650円(税抜1,500円)
ハーブ金団と季節の金団 古今食べ比べ(ドリンク付き:煎茶・珈琲・和紅茶からセレクト)/2,090円(税抜1,900円)